沓掛時次郎 歌詞 鏡五郎 ふりがな付

意地いじだ義理ぎりだと 男おとこの勝手かって
なんで女おんなに 罪つみがある
詫わびの印しるしか 罪つみほろぼしか
はぐれ母子ははこを 道連みちづれに
旅たびに流ながれる 時次郎ときじろう

「一宿一飯いっしゅくいっぱんの義理ぎりとは言いえ、あっしは御内おか
儀みさんのご亭主ていしゅの憎にっくき仇かたき。いくら詫わび
ても 詫わび切きれるもんじゃござんせん。も
しも もしも償つぐないをさせて下くださるとおっし
ゃるのでしたら この沓掛くつがけの時次郎ときじろう 命いのちに
代かえて御内儀おかみさんと太郎吉たろうきち坊ぼうの面倒めんどうを 生しょう
涯がいみさせていただきます。」

父親ちゃんの仇かたきと 知しらずに懐なつく
やんちゃ坊主ぼうずを 肩かたぐるま
遊あそび相手あいての ないのが不憫ふびん
玩具がんぐ代がわりに 星ほしひとつ
取とってやりたい 宵よいの空そら

「亭てい主しゅに仕つかえる妻つまの姿すがた、子供こどもに尽つくす母ははの
姿すがた、あっしはお絹きぬさんに本当ほんとうに美うつくしい女おんなの
姿すがたを見みせて貰もらった。だけど 惚ほれたホの字じ
も言いっちゃならねえ。もしも 一言ひとこと口くちに出だ
したら 一緒いっしょに旅たびが出来できなくならあ。」

破やぶれ障子しょうじを 挟はさんで寝ねても
旅たびを重かさねりゃ 恋こいごころ
叶かなうものなら 長脇差ながドス捨すてて
子連こづれおしどり 道中どうちゅうで
明日あすに生いきたい 時次郎ときじろう