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何も無い場所で生きるあなたへ-『ここにしか咲かない花』で歌われる場所

2018年に結成20周年を迎えたコブクロ。黒田俊介と小渕健太郎のデュオが2005年に発表した11枚目のシングル『ここにしか咲かない花』はコブクロらしさの凝縮された一曲だ。小渕による弾き語りではじまるオープニングに黒田が加わり終盤にかけてドラマチックに盛り上がる構成とそっと寄り添うような歌詞が多くのリスナーから支持されてきた。

コブクロ / ここにしか咲かない花



『ここにしか咲かない花』が歌っているのは過去への追憶と未来へのまなざしという普遍的なテーマだ。この曲が収録されたアルバム『NAMELESS WORLD』でコブクロは初のオリコンチャートナンバー1を記録。路上パフォーマンスからはじまったコブクロの人気を決定づけた曲といっても過言ではない。

ドラマの主題歌にもなった『ここにしか咲かない花』は小渕がドラマの舞台である沖縄県の鳩間島を訪れて受けた印象を描いた曲と言われている。目指していたナンバー1という場所にたどり着いた2人が訪れた「何も無い場所」。そこから見えたのはどんな風景だったのだろうか?

【歌詞コラム】コブクロがオフクロに贈った楽曲「hana」

沖縄県の鳩間島を訪れて受けた印象を描いた

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何も無い場所だけれど ここにしか咲かない花がある
心にくくりつけた荷物を 静かに降ろせる場所
空の色映し出した 瑠璃色の海遥かから聞こえる
あなたの笑い声は よく聴けば波の音でした
――――
人口わずか50人程度、海に囲まれた100メートル四方の鳩間島。波の音と浜辺に咲いた一輪の花が静かな小島を世界にひとつだけの場所に変える。傷心の主人公が胸に抱くのは遠く離れたあの人のおもかげだ。「何も無い場所」が過ぎ去った光景をよみがえらせ、記憶が遠い過去へと運ばれていく。

「同じ数の出会いと別れ」はひとつひとつが大切な思い出

――――
影が教えてくれるのは そこにある悲しみだけじゃない
うつむく顔を上げて振り返れば そこにある光に気付くだろう
同じ数の出会いと別れ でも割り切れなくて
余るほどの想い出をいつまでも 胸に咲かせながら
――――
1998年、セールスマンのかたわら路上ライブをしていた小渕とストリートミュージシャンだった黒田が出会ったことからコブクロはスタート。翌年、小渕が会社を辞めインディーズからアルバムをリリース。転がりはじめた運命は勢いを増して2001年3月にメジャーデビューを果たす。

順調そうに見える足跡だが、頂上へ歩む中で目にしたのは光だけではなかった。夢と希望で彩られた表現の世界。その舞台裏にはたくさんの絶望や悲しみが存在する。光と影をくぐり抜ける中で得た「同じ数の出会いと別れ」はひとつひとつが大切な思い出になっていった。


20周年を迎えた2人の心境

――――
あの優しかった場所は今でも 変わらずに僕を待ってくれていますか?
ふいに込み上げる寂寞の想いに 潤んだ世界を拭ってくれる
雨上がりの道は泥濘(ぬか)るむけれど 今ここに生きている証を刻むよ
いつかこの涙も 寂寞の想いも 忘れ去られそうな時代の傷跡も
――――

そして訪れた「何も無い場所」。景色こそ全く違うが、それはコブクロがはじまったあの路上を思い起こさせる場所だったに違いない。過ぎ去りし日々をふりかえって感じる「今ここに生きている証を刻む」という思い。この場所から再び歩みはじめること。それは20周年を迎えた2人の心境そのものだろう。

タイトルに込められた強い意志

『ここにしか咲かない花』というタイトルには「ここで咲く」という強い意思が込められている。それは「何も無い場所」で今日も生きるあなたへのメッセージでもあるのだ。



TEXT:石河コウヘイ

小渕健太郎は1977年3月13日生まれ。宮崎県出身。黒田俊介は1977年3月18日生まれ。大阪府出身。 ストリートライブ活動を通じて1998年9月にコブクロを結成。 2001年3月、ワーナーミュージック・ジャパンより「YELL~エール/Bell」でメジャーデビュー。 2006年のベスト・アルバム「ALL SINGLES···

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