二軍選手 歌詞 さだまさし ふりがな付

スター選手せんしゅとのトレードで 彼かれがこの町まちに来きたのは
三さん年前ねんまえ北風きたかぜの強つよく吹ふく午後ごごだった
合宿所がっしゅくじょ迄までの道程みちのりを きかれたことから二人ふたりの
二流にりゅうの歌手かしゅと投手とうしゅは友達ともだちになった

泥どろまみれの彼かれの笑顔えがおが 僕ぼくを勇気ゆうきづけ
僕ぼくの歌うたが 彼かれの安やすらぐところとなり
ともすればくじけそうな それぞれの
夢ゆめという名なの自分じぶんを支ささえ合あっていた そして

チャンスは 初はじめ僕ぼくに来きた
オーディションに通とおってレコード・デビューが決きまった
僕ぼくは彼かれからギターを贈おくられた
彼かれは自分じぶんの事ことのように はしゃいだ
まるで自分じぶんの事ことのようにね

翌年よくねんの春はる過すぎに 僕ぼくはこの町まちに帰かえった
僕ぼくの歌うたは少すこしも 売うれはしなかった
彼かれはまだ二軍ふぁーむに居いて 僕ぼくをなぐさめるかわりに
泥どろにまみれたいつもの 笑顔えがおで迎むかえた

挫くじけそうな僕ぼくのステージの傍かたわらで
時折ときおり遠とおくをみつめる彼かれがいた
ともすれば はじけそうな それぞれの
風船ふうせんみたいな夢ゆめを守まもろうとするように やがて

チャンスは 次つぎに彼かれに来きた
ナイトゲーム先発せんぱつで彼かれの名前なまえが呼よばれた
プレイボールの声こえを聞きき乍ながら僕ぼくは
まるで自分じぶんの事ことみたいに震ふるえてた
そう自分じぶんの事ことのようにね

彼かれは今いまスター選手せんしゅの「恋人こいびと」と呼よばれてる
バッティングピッチャーとして泥どろまみれで投なげ続つづけてる
僕ぼくは小ちいさな酒場さかばで こうして歌うたってる
ささやかな物語ものがたりを誰だれかに伝つたえたくて

誰だれもが夢見ゆめみるスターのポジションは
もう僕ぼくらに与あたえられることはないけど
そうして誰だれの為ための道みちかを教おそわった今いま
実じつは僕ぼくらの夢ゆめは始はじまったばかり そうさ

彼かれは心こころから野球やきゅうを愛あいしてる
僕ぼくは心こころから歌うたを愛あいしてる
たとえ泥どろまみれで捨すてられても笑わらってみせる
たぶん自分じぶんの事こと以上いじょうに愛あいしてる
そう 自分じぶんの事こと以上いじょうにね