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井上陽水『少年時代』に散りばめられた造語には本当に意味はないのか?

1990年9月にリリースされた井上陽水の『少年時代』は、自身の最大のヒット曲であり、代表曲の一つに挙げられている。

井上陽水 最大のヒット曲『少年時代』


1990年9月にリリースされた井上陽水の『少年時代』は、自身の最大のヒット曲であり、代表曲の一つに挙げられている。

意外なことに、発売当初はオリコンの週間シングルチャートでも最高20位程度であったが、1991年にソニーのハンディカムCCD-TR105でCM曲に採用されたことにより、最高4位まで上り詰めた。

そんな『少年時代』を大ヒット曲に導いたのには、井上陽水が作り出した造語が寄与しているかもしれない。…そもそもこの曲に造語なんてものが存在したことは、あなたはご存じだろうか?

実は「風あざみ」「夏模様」「宵かがり」「夢花火」などの言葉は井上陽水が独自に作った造語である。井上陽水がインタビューで「響きのよさで作った言葉で、意味ないんだよ。」と答えていることからも事実である。

しかし、本当に響きのよさで作られた言葉なのだろうか?少なくとも井上陽水はその言葉に意味を含ませているはずだ。このことを出発点に歌詞を解釈し、これら造語の意味を追求していく。

風あざみに込められた虚無感


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夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空に残された
私の心は夏模様
≪少年時代 歌詞より抜粋≫
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「風あざみ」と聞く大半の人が植物のアザミをイメージするだろう。実際にアザミの開花期は4月~7月であり、この曲の背景と一致している。

しかし、この曲では具体的な植物としてのアザミを示しているのではないのだ。アザミの花言葉は、「独立」「報復」「厳格」「触れないで」とネガティブなイメージで語られ、孤独を感じさせる。

夏が過ぎさった少年時代の虚無感というものを「風あざみ」という言葉で井上陽水は表現している。「青空に残された私の心は夏模様」の歌詞も夏休みが終わったあとのあの虚しい感情を表している。

子供のころの夏の思い出は大人になっても楽しい思い出として記憶される。青空という記憶装置に子供のころの楽しい夏の思い出(=夏模様)を残している。このように、井上陽水は造語を使って歌いやすくかつ記憶に残りやすい言葉を用いているのだ。

夏まつりと宵かがりの意味


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夏まつり 宵かがり
胸のたかなりにあわせて
八月は夢花火
≪少年時代 歌詞より抜粋≫
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「夏まつり」と「宵かがり」が並列に置かれている。「夏まつり」は夏祭りという解釈で間違いない。

では、「宵かがり」の意味はというと、宵とかがりで分解して考えると分かりやすい。宵とは、①日が暮れて間もないころ ②祭りなど、特定の日の前夜 という2つの意味がある。

かがりとは、照明のために燃す火、つまりかがり火のことを指している。

これらから分かることは、夏まつりと宵かがりが並列に置かれていることからも、夏まつりの行われる前日の高揚感を宵とかがりを組み合わせることによって作り出しているということだ。

そして、「八月は夢花火」である。夢花火もおそらく井上陽水の造語であろう。しかし、これまでの造語とは異なり解釈は容易である。夢のような八月の楽しかった思い出を花火の儚さにかけている。

夢と想い出のさきにあるもの


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夢はつまり
想い出のあとさき
≪少年時代 歌詞より抜粋≫
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この部分の歌詞もイメージがわきにくい。簡単に言うと、夢って想い出のあとさきなんだよということだ。

しかし、あとさきという言葉の意味がよく分からなければ、ここで井上陽水が言っていることの解釈は不可能だろう。あとさきとは、①位置や時間の前と後ろ ②ある事が起こるまでの経過と起こったあとの結果 ③物事の順序 である。

このことから「夢はつまり想い出のあとさき」の意味内容が分かってくるはずだ。井上陽水は歌詞上で夢とは、思い出の延長線上にあるものと考えており、夢は想い出の一つとしている。

井上陽水が、なぜこのような造語を用いたのかということに関して私なりの見解を明らかにしたい。私は、造語を用いることによって聴き手側に想像の余地を与えていると考えている。聴き手側の少年時代の楽しかった日々を想像させるような言葉でもあるのだ。

『少年時代』を聴ききながらみなさん自身がこの言葉の意味を解釈し、余韻深めてみてはどうだろうか。



↓人生を楽しむ極意を井上陽水が示す

↓1989年に現代社会の問題を井上陽水は感じていた…!?



TEXT 川崎龍也

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